◎埋蔵金関連の法律 概要
- 超難解な我が国の法律。日常、使いもしないカタカナ混じりの法文ですらいまだに通用しているというのも、実は変な話だが、それはともかく、法は法、すべての基本なのだから、一度は絶対に目を通しておく必要がある。
■民法■
- [遺失物の拾得]
- 第二四〇条 遺失物ハ特別法ノ定ムル所ニ従ヒ公告ヲ為シタル後三カ月内ニ
其所有者ノ知レサルトキハ拾得者其所有権ヲ取得ス
- [埋蔵物の発見]
- 第二四一条 埋蔵物ハ特別法ノ定ムル所ニ従ヒ公告ヲ為シタル後六カ月内ニ
其所有者ノ知レサルトキハ拾得者其所有権ヲ取得ス但他人ノ
物ノ中ニ於テ発見シタル埋蔵物ハ発見者及ヒ其物ノ所有者
折半シテ其所有権ヲ取得ス
■刑法■
- [占有離脱物横領]
- 第二五四条 遺失物、漂流物其他占有ヲ離レタル他人ノ物ヲ横領シタル
物ハ一年以下ノ懲役又ハ十万円以下ノ罰金若クハ科料ニ処ス
■遺失物法■
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- [拾得者の義務]
- 第四条 拾得者は、速やかに、拾得をした物件を遺失者に返還し、又は警察署長に提出しなければならない。ただし、法令の規定によりその所持が禁止されている物に該当する物件及び犯罪の犯人が占有していたと認められる物件は、速やかに、これを警察署長に提出しなければならない。
- [報労金]
- 第二十八条 物件(誤って占有した他人の物を除く。)の返還を受ける遺失者は、当該物件の価格(第九条第一項若しくは第二項又は第二十条第一項若しくは第二項の規定により売却された物件にあっては、当該売却による代金の額)の百分の五以上百分の二十以下に相当する額の報労金を拾得者に支払わなければならない。
- [費用及び報労金の請求権の期間の制限]
- 第二十九条 第二十七条第一項の費用及び前条第一項又は第二項の報労金は、物件が遺失者に返還された後一箇月を経過したときは、請求することができない。
- [費用請求権等の喪失]
- 第三十四条 次の各号のいずれかに該当する者は、その拾得をし、又は交付を受けた物件について、第二十七条第一項の費用及び第二十八条第一項又は第二項の報労金を請求する権利並びに民法第二百四十条若しくは第二百四十一条の規定又は第三十二条第一項の規定により所有権を取得する権利を失う。
一 拾得をした物件又は交付を受けた物件を横領したことにより処罰された者
二 拾得の日から一週間以内に第四条第一項の規定による提出をしなかった拾得者(同条第二項に規定する拾得者及び自ら拾得をした施設占有者を除く。)
- [公告等]
- 第七条 警察署長は、提出を受けた物件の遺失者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、次に掲げる事項を公告しなければならない。
一 物件の種類及び特徴
二 物件の拾得の日時及び場所
2 前項の規定による公告(以下この節において単に「公告」という。)は、同項各号に掲げる事項を当該警察署の掲示場に掲示してする。
3 警察署長は、第一項各号に掲げる事項を記載した書面を当該警察署に備え付け、かつ、これをいつでも関係者に自由に閲覧させることにより、前項の規定による掲示に代えることができる。
4 警察署長は、公告をした後においても、物件の遺失者が判明した場合を除き、公告の日から三箇月間(埋蔵物にあっては、六箇月間)は、前二項に定める措置を継続しなければならない。
- お疲れさまでした!さて、御理解頂けたでしょうか?
- 何となく全体像が浮かんできたでしょうか。では、ここで日本語(?)で具体的に埋蔵金を探したとして、法との関わり合いを取り上げてみましょう。
幸運にして、万が一、億が一に埋められていた財宝を発見したとします。我が国では、埋蔵金は遺失物と同様の扱いを受けることが民法や遺失物法で分かります。ということは、発見次第速やかに届け出なければならないというわけです。
現実問題として埋蔵金の遺失者や直接の所有者がその場で分かっていることはまれですから、警察に届けるということになります。
一部の(多くの!)埋蔵金関連書籍で「七日以内に所轄の警察署に届けないと罰せられる」と記した物が多いのですが、これは明らかに間違いで、「速やかに」が正解です。「七日以内」が関連してくるのは、その後の拾得物に対する報奨金をもらえる権利に関連した条件で、「七日以内」に届け出ないと横領した時同様、権利が消滅する。
そして、届け出をすると…
道で財布を拾ったのと同様、警察が公告を行い、六カ月間(改正された新“遺失物法”では、一般の遺失物ではこれが三カ月に短縮されたが、埋蔵金のみなぜか六カ月のままだった)の間に所有者が現れなければ、晴れて発見者の物になる、かというとこれがまた違う。
すべて自分の物になるのは、発見した土地が自分の土地の時だけ。通常は土地の所有者と折半になる。逆に言えば土地の所有者は、黙って掘らせるだけで、お宝の半分が自分の物になるのだ!
もちろん掘るときは所有者の許可を得ていることが前提だ。不法に他人の土地を掘るなどは論外で、私有地なら許可を得るのも簡単だが(ただ、掘らせてくれない所有者が少なくないことも覚悟しておくべき)、これが国有地だと許可を取るのは大変だ。公園内や古墳などでは許可が下りないことも多い。
ちなみに、民法第二三九条に「無主ノ不動産ハ国庫ノ所有ニ属ス」と記載があり、所有者のいない土地はないので念のため。ただ蛇足として付け加えると許可を取らないで発掘した場合でも、遺失法の権利は存在するということ。
正しく速やかに差し出しせば(七日以内)報労金の請求権自体は保護される。もちろん許可を得ないで発掘した方の罪は免れないが……。
それでは、所有者が現れたらどうなるのだろう。
その場合は、警察が本当に所有権を有するか調べることになる。代々続いた旧家の土蔵を壊したら、壁から小判がざっくざく、などという例はともかく、この所有権が認めれることはきわめて異例といえる。
埋蔵金と一緒に所有を裏付ける書き付けが出てきた、などの例以外ではまず立証は難しい。
それでも持ち主が確定されてしまったら、その時は財布を拾った時同様「報労金」として、発見した財宝の価格の最大20%から、最小5%を請求(請求しなければならないことに注意)。実際の例では10%がほとんどで20%を期待するのはちと甘い。
もとに戻って、所有権者が現れなくてもまだ問題が残っている。それは、埋蔵金の宿命ともいえる、文化財的価値の問題だ。
文化財保護法という法律があり、「有形の文化的所産で、我が国にとって歴史上または芸術上価値の高い物」は法律で保護されるのだ。文化財は日本国民の共有の宝物、ということで、どんなに苦労に苦労を重ねて発見した物でも勝手に処分したり所持したりできない仕組みになっている。
この場合は、警察から、文化庁に担当が移り、ここで判断が下されることになる。文化財と指定され、晴れて(?)美術館入りとなると、発見者には「報償金」が入ってくるのだが、この「報償金」土地の評価と同じで、国が決めた価格と、実勢価格に大きな開きがあるのと同様、著しく安い評価しか得られなかったりする。「報労金」と大差ない額でも諦めるしかない。
これが「埋蔵金が発見されたなんていうニュース聞かないじゃない!」の元凶になっている、と見る専門家も多い。つまり発見しても猫ばばを決め込んでしまっているというのだ。
何はともあれ、埋蔵金探しは法に則って、正しく安全に楽しみましょう。